高血圧診療
1. 高血圧初診外来
高血圧診療において、まずは二次性高血圧(原発性アルドステロン症、腎血管性高血圧、褐色細胞腫、甲状腺機能亢進症など)の有無についての精査を行う。
<観察すべき項目>
外来血圧測定、甲状腺触診、頸動脈雑音の有無、心音(心雑音の有無)、腹部血管雑音、下腿浮腫の有無
<問診すべき項目>
症状の有無(頭痛、発作性のふらつきの有無など)、家族歴(高血圧家族歴、心血管イベントの有無、腎障害の有無)、既往歴(高血圧歴、健診で異常指摘の有無)、嗜好品(喫煙の有無)、内服薬(漢方薬、甘草、仁丹)の確認、サプリメントの確認
<検査すべき項目>
画像検査
・胸部レントゲン:心胸比(心不全の有無の確認)
・腹部エコー:腎のサイズ(背部から観察)→正常腎サイズ:約10cm
・腎血流ドプラ:腎血管狭窄の有無の精査⇒腎血管性高血圧の鑑別(疑わしければ腎シンチ、レノグラム)
・四肢血圧測定(血圧脈波)⇒左右差血圧確認
・24時間血圧測定
血液検査
血算、一般生化学・電解質に加えて…
・アルドステロンとレニン:アルドステロン値>120pg/mlかつARR(アルドステロン濃度/レニン活性比)>200なら、腹部CTで副腎の腫大の有無(thin sliceで観察する)、生食負荷試験施行する。
・甲状腺ホルモン(正常値:TSH 0.49-4.67μIU/mL、FT4 0.7-1.9ng/dL)
・尿中カテコラミン(U-カテコールアミン3分画、U-メタネフリン分画、U-VMA定量、U-Cre)
・ACTH、コルチゾール、好酸球低下⇒クッシング症候群を疑う
他科受診
・眼科受診(眼底検査をお願いする)
※本態性高血圧は除外診断!!
2. 原発性アルドステロン症の鑑別
生食負荷試験
実施前に確認すること
心電図・心エコーを確認!!
心腎機能(eGFR>30ml/min/1.73m2、BNP<100pg/ml、心エコーでEFの低下がない、不整脈がない、胸部レントゲンでうっ血なし)
低K血症がないか
TTKG確認(尿浸透圧、尿中K、血漿浸透圧、血中K)
※β遮断薬を中止しているか(レニン、アルドステロンを抑制作用があるため):14日間以上中止する
※アルドステロン拮抗薬(セララ、スピロノラクトン、ミネブロ)を中止しているか:6週間~2ヶ月以上中止する
手順
※延食にする!
①負荷前にアルドステロン臥位、レニン活性臥位、レニン定量臥位を測定
②生食1000ml(正式:2000ml)を2時間(正式:4時間)で投与
③負荷後にアルドステロン臥位、レニン活性臥位、レニン定量臥位を測定
判定
負荷後アルドステロン値(PAC)>85pg/ml(日本内分泌学会診断基準)
負荷後アルドステロン値(PAC)>67.5pg/ml(アルドステロン産生腺腫の診断基準)
負荷後レニン活性(PRA)>0.5では続発性アルドステロン症
※生食負荷試験で陽性なら、原発性アルドステロン症であった場合手術希望するかを患者様に確認し、希望する場合は、入院手続き+腹部造影CT(副腎thin slice;右副腎静脈位置確認のため)を確認して、副腎静脈サンプリングをオーダーする。
⇒院内では、選択的サンプリング術前目的とオーダーする!!
※副腎静脈サンプリングをした場合は、必ず医師が分注して下さい。
副腎静脈サンプリング
局在診断における感度,特異度がAVSより優れているとの報告はない。それゆえ、PAの手術を考慮する場合には、現時点ではAVSが最も標準的な局在診断法である。
基本的に評価は、左右副腎静脈、下大静脈末梢側で評価する。
※以下の手順で、①カテーテル挿入が上手く行っているか→②アルドステロン過剰産生局在判定の手順で評価する。
①カテーテルの挿入についての評価
|
ACTH負荷なし |
ACTH負荷あり |
絶対量 |
副腎静脈のコルチゾール値 40μg/dl以上 |
副腎静脈のコルチゾール値 200μg/dl以上 |
比 |
副腎静脈/下大静脈末梢側 コルチゾール比で3以上 1.1~3は境界型 |
副腎静脈/下大静脈末梢側 コルチゾール比で3以上 |
※上記を満たせば、カテーテルがきちんと入っていることが確認できる。
②アルドステロン過剰産生局在判定評価
|
ACTH負荷なし |
ACTH負荷あり |
絶対量 |
副腎静脈のアルドステロン値 2500pg/ml以上 |
副腎静脈のアルドステロン値 14000pg/ml以上 |
比 |
アルドステロン/コルチゾール左右比 4.7以上 1.98~4.7は境界型 |
アルドステロン/コルチゾール左右比 4以上 2.6~4は境界型 |
3. 尿中カテコラミン評価
尿中カテコラミン÷尿中Cr×100を計算して、以下の基準と照らし合わせる
|
基準下 |
基準上 |
U-AD |
3 |
15 |
U-NA |
26 |
121 |
U-DA |
190 |
740 |
U-VMA |
1.3 |
5.1 |
U-MN |
0.05 |
0.23 |
U-NMN |
0.07 |
0.26 |
上記の検査で正常上限の3倍以上を認めた際は、副腎CT・MRIで副腎の腫瘤を確認。
さらに、131I(123I)MIBGシンチグラフィで確認する。
※造影剤はクリーゼ誘発の可能性があるため原則禁忌!!